書評

「静かに、ねぇ、静かに」をSNSで消耗しているすべての人に捧ぐ

こんにちは、ずっきです(´ー`)

今回も書評というか感想文的なアレを。

他の方のブログで紹介されていた「静かに、ねぇ、静かに」という本がおもしろそうで、思わずkindle本をポチってしまいました。

本谷有希子さんという芥川賞を受賞された方の作品です。

この本はタイトルの頭文字にもなっているSNS(Shizukani Nee Shizukani)を題材にした3つの短編集。

半日もかからず読み終わったんですが、とりあえず、

すごく面白い、そして、ただただ後味が悪い…。

私もTwitterをやっていますが、しばらくアプリを開けないほどの威力でした。うぅぅ。

ということで今回は、そんな破壊力抜群な「静かに、ねぇ、静かに」を紹介しようと思います。

内容はぜひ本編を読んでほしいのでネタバレは少な目(ちょっとある)で。

「静かに、ねぇ、静かに」あらすじと感想

「本当の旅」

専門学校の同級生だったハネケン、づっちん、ヤマコ。SNSで連絡を取り合ってはいたものの、会うのは数年ぶり。そんな彼らがクアラルンプールへと旅に出る。

彼らはわかりやすいほどにインスタにどっぷりとハマっており、大事なのは「楽しい」と感じるかではなく「楽しそう」に見えるか、「おいしい」と感じるかではなく「おいしそう」に見えるかどうかである。

SNSの世界にどっぷり浸かり、現実から目を背け続けた結果…

3つのお話の中でも、一番SNSに特化したお話です。

「自由に生きる」と言いながら実家に寄生するただのニートづっちん、そんなづっちんに勧められるまま田舎に畑付きの家を借りてWEB関係の仕事で細々暮らすハネケン、職を転々とし今はTシャツ屋でバイトをしているヤマコ。

結構ダメな生活を送っている彼らですが、まぁ若いうちはね~なんて思うじゃないですか?

この人たち実は40代のおじさんおばさんなんです…。

もうね、読んでてツラい(白目)

この物語は、「他人に共感することで、自分の意思をなくした人たちの末路をイヤ~な気持ち悪い感じで淡々と描いていきます。

ハネケンはづっちんとヤマコの行動にちょこちょこ疑問を抱くんですが、その度に

づっちんのオススメだと思ってみると、不思議と、何もかもが猛烈に良い感じに思えてくるのだった。

出典:「静かに、ねぇ、静かに」より

こう自分で納得し、どんどん現実から目を背けていきます。

これってSNSの世界ではよくあることですよね。いわゆるインフルエンサーとよばれる人が良いと発信したことには、それが常識とズレていてもたくさんの共感をよびます。

その様子に、どこか得体のしれないモヤモヤを抱えている人も多いのでは。

「楽しい」と感じるかではなく「楽しそう」に見えるかが大事

「おいしい」と感じるかではなく「おいしそう」に見えるかが大事

自分が疑問を抱いたことでも、大勢が共感する方向へ流されてしまう

自分の意思をなくし、SNSと現実の境界線を見失ってしまった彼ら。そんな彼らの末路は、ぜひ本編で。

すっきりとはしないけど、得体のしれないモヤモヤの正体が少しわかるかもしれません。

「奥さん、犬は大丈夫だよね?」

ネットショッピングに依存する妻、それをやめさせたい夫が同僚夫婦とキャンピングカーで旅に出るというお話。

「不便さを楽しむ」という同僚夫婦とはまったく気が合わない妻。なんとなく嫌な空気が漂う車内だったが、夜が深まるにつれ、少しづつ打ち解けていく。だが…。

依存症の妻が起こした行動にただただ言葉が出ないラスト。

「本当の旅」があまりに衝撃的で読むのさえ怖くなってしまったけど、頑張って読みましたよっと。

どちらかというと、「本当の旅」より「奥さん、犬は大丈夫だよね?」の方が何倍も胸糞悪かったです…。

ネットショッピングに依存する妻、「不便さが楽しい」と気持ち悪いほど倹約家な同僚の妻。

夫婦2組+犬で旅に出るんだけど、文字からでさえ伝わってくる車中のイヤーな空気感。

スマホ一台あれば私がこの本を買ったように、どこにいても何でも手に入る世の中。

すごく便利で良いことなんだろうけど、「物を買っている」という感覚はなくなってしまうのかもしれないですよね。

私も何年か前にネットショッピングにどっぷりハマって、一度も着ていない服で部屋が溢れている時期があったなぁ…こわいこわい…。

「物がほしい」のではなく、「クリックすること」自体が目的になってしまう。便利であることは素晴らしいけど、便利すぎるがゆえに現実感が薄れていく。そんなお話。

依存症の妻が最後どうなってしまうのか。妻を救いたかった夫は。こちらもぜひぜひ本で確認を。

救いはないけど得るものはあるはず。

「でぶのハッピーバースデー」

勤め先の倒産により無職になってしまった通称「でぶ」とよばれる妻と、その夫のお話。

ハローワークに通うものの、なかなか職に就くことができない「でぶ」。夫はその原因が「でぶ」のひどい乱杭歯にあると言う。矯正を勧めるがなかなか踏み出せない「でぶ」。

なんとかレストランで夫婦2人バイトを始め、少しづつ良い方向へ進んでいくかに思えたが…。

「本当の旅」と「奥さん、犬は大丈夫だよね?」は登場人物に対しての嫌悪感がすごいのだけど、この「でぶのハッピーバースデー」に出てくる主人公ふたりに対しては全くそんな気持ちを抱きませんでした。

ふたりの不器用ながらも懸命に生きる姿は、歯がゆいような悲しいようななんとも言い表しがたい気持ちにさせます。

「俺達が、色んなことを諦めてきた人間だっていう印だよ」

出典:「静かに、ねぇ、静かに」より

妻の乱杭歯のことを夫は「印」と呼びます。人生が上手くいかないのは、この印がついているせいだと。

それでもふたりは、懸命に働きながら印を無くす努力をして、前を向いて生きていこうとするんです。その姿は健気で愛おしく切なく感じてしまうほど。

これはもしやハッピーエンド??と思ったんですが、そうはいきませんでしたw

あらすじと感想だけじゃ何のこっちゃという感じかもしれませんが、この話はネット上に過激な動画を晒すひとたちのことを比喩しています。

「俺達の印がどうなったかを、皆さんに見てもらうんだよ」
「皆さんって?」とでぶ。「誰のこと?」
「世界中の皆さんにだよ」

「でぶの印の動画を撮って、それをネットに流すんだ」

出典:「静かに、ねぇ、静かに」より

不器用にしか生きられなかったふたりが、それを晒すことで居場所を見つけようとする。果たしてそれがふたりにとって正しい道なのかはわかりません。

ただただ、このふたりが幸せに生きてってくれればいいなぁと思いながら本を閉じた私なのでした…。

まとめ

この本はSNSやネット社会に依存する人たちのこと、悪意たーーっぷりに風刺した本。

主人公の3人はどう見ても普通ではないんだけど、極端に描かれているだけで、誰でもそうなる可能性はあるのかもしれません。

後味が悪いと書きましたが、日ごろSNSの世界に対して思うことがある人には、とんでもなく刺さるはず。

読み物としても面白いので、興味を抱いた方はぜひ読んでみてくださいねっ。

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